凱歌の夏
常にこれが最後と云う気持でマウンドに上っている。
中学の頃からの習慣だ。
味方の攻撃をベンチから応援しながらふと思う。
小学校からバッテリーを組んでいるあいつが教えてくれた大事なこと。
監督の横でずっと変わらずキャプテンとして声援を送り続けているあいつの姿が目に入り次から次へと思い出が浮かんでは消えて行く。
まさか走馬灯!?・・・縁起でも無い。(苦笑)
あっさりと攻撃は終わり四回裏のマウンドへと向かう。
この夏三回も校歌を歌ったがまだまだあいつとそして素晴らしい仲間達と野球を続けて行きたい。
それでもマウンドに上る気持は変わらない。
(これが最後・・・)
気持を込め気合をひとつ入れプレートを踏む。
マスク越しのあいつの表情が何時もの様に僅かに緩んだ。
11−0。
本当に最後の回になるかも知れ無いが試合は審判のコールがあるまでは終わらない。
少なくとも俺には後悔はないし仲間達も同じだろう。
変わらぬ気持で渾身の投球を始める。
今木 洛